【スグルのリアル体験 1 】俺の生い立ち 〜「ちゃんとしっかり食べてる?」
- 2025/01/01
夢の中で母ちゃんがいつもそう語りかけてくる。
最近、この夢ばかり見る。小学生の頃の、あの寂しくてたまらなかった日々がよみがえる。
俺は6歳の時に母ちゃんを亡くした。白血病だった。
父ちゃんも仕事でほとんど家にいなくて、俺は団地の部屋で一人で過ごすことが多かった。
隣の家から聞こえてくる笑い声が、たまらなく羨ましかった。
楽しそうな家族の姿を窓越しに見るたびに、
「なんで俺だけこんな目に遭わなきゃいけないんだ?」って心は叫ぶ!
母ちゃんは入院中も優しかった。父ちゃんや叔母さんに連れられて病院に行くと
、俺の話を嬉しそうに聞いてくれた。幼稚園で何があったとか、友達がどうしたとか、
遊んだ話なのに、母ちゃんは笑顔で「それでどうなったの?」っていつも聞いてくれた。
その笑顔を見るたび、「母ちゃんが早く家に帰って来てくれたらいいのに」って心の底から思った。
でも、そんな願いは叶わなかった。
入院から7ヶ月、夏の暑い日、母ちゃんは逝った。
最期の言葉は「退院したら美味しいものを作るからね」
俺はただ頷くだけで、それが最期になるなんて思いもしなかった。
葬式の日、俺は泣かなかった。いや、泣けなかったんだ。
あまりに現実が重すぎて、心が何も感じなくなっていた。
でも、霊柩車に乗って火葬場へ向かい、目の前で母ちゃんが燃えていくのを見たとき、
止めどなく涙が溢れた。堪えられなくて、声を上げて泣いた。
初めて「母ちゃんがいなくなったんだ」って痛いほど実感した。
それから何十年も経ったけど、母ちゃんの言葉は俺の中に生きている。
「ちゃんとしっかり食べてる?」その声が今でも夢の中で聞こえるたびに、
胸が締め付けられる。
母ちゃんはもういないのに、ずっと俺を気にかけてくれてる気がするんだ。
母ちゃん、俺はちゃんと食べてるよ。
だけど、本当はあの日の「美味しいもの」が食べたい
母ちゃんが作るはずだった、母ちゃんのご飯。
一緒に食べたかったよ。
ありがとう、母ちゃん。俺、頑張るね!