【スグルのリアル体験 1 】俺の生い立ち 〜 「夢に出てくる母の声」

夢の中で母ちゃんがいつもそう語りかけてくる。

最近、この夢ばかり見る。小学生の頃の、あの寂しくてたまらなかった日々がよみがえる。

 

俺は6歳の時に母ちゃんを亡くした。白血病だった。

父ちゃんも仕事でほとんど家にいなくて、俺は団地の部屋で一人で過ごすことが多かった。

隣の家から聞こえてくる笑い声が、たまらなく羨ましかった。

楽しそうな家族の姿を窓越しに見るたびに、

「なんで俺だけこんな目に遭わなきゃいけないんだ?」って心は叫ぶ!

 

母ちゃんは入院中も優しかった。父ちゃんや叔母さんに連れられて病院に行くと

、俺の話を嬉しそうに聞いてくれた。幼稚園で何があったとか、友達がどうしたとか、

遊んだ話なのに、母ちゃんは笑顔で「それでどうなったの?」っていつも聞いてくれた。

その笑顔を見るたび、「母ちゃんが早く家に帰って来てくれたらいいのに」って心の底から思った。

 

でも、そんな願いは叶わなかった。

入院から7ヶ月、夏の暑い日、母ちゃんは逝った。

最期の言葉は「退院したら美味しいものを作るからね」

俺はただ頷くだけで、それが最期になるなんて思いもしなかった。

 

葬式の日、俺は泣かなかった。いや、泣けなかったんだ。

あまりに現実が重すぎて、心が何も感じなくなっていた。

でも、霊柩車に乗って火葬場へ向かい、目の前で母ちゃんが燃えていくのを見たとき、

止めどなく涙が溢れた。堪えられなくて、声を上げて泣いた。

初めて「母ちゃんがいなくなったんだ」って痛いほど実感した。

 

それから何十年も経ったけど、母ちゃんの言葉は俺の中に生きている。

「ちゃんとしっかり食べてる?」その声が今でも夢の中で聞こえるたびに、

胸が締め付けられる。

 

母ちゃんはもういないのに、ずっと俺を気にかけてくれてる気がするんだ。

母ちゃん、俺はちゃんと食べてるよ。

だけど、本当はあの日の「美味しいもの」が食べたい

母ちゃんが作るはずだった、母ちゃんのご飯。

一緒に食べたかったよ。

ありがとう、母ちゃん。俺、頑張るね!