【スグルのリアル体験 6 】〜「リアルな挑戦の始まり」
- 2025/01/06
俺は27年間、小学校や中学校の用務員として働いてきた。
子どもたちの笑顔、先生たちとのやりとり、校舎の隅々まで掃除し、修理する日々。
そんな学校現場でリアルな経験を積んだが、この道のりは、決して平坦なものではなかった。
教育委員会の採用試験に合格したのは25歳のとき。それまでは地元の民間企業で働いていた。
履歴書が山積みになるほど人気の会社だ。俺もその一員になったが、実のところ、親父のコネで入社したのだ。
親父と親交の深かった地元の有力者の紹介で、面接も形式的なものだった。
周囲の人たちが苦労して入ったその会社に、俺はほとんど努力せずに入った。
待遇は抜群だった。若手社員が憧れる花形部署に異動したり、上司がやたらと優しく接してくれたり。
何をするにも、俺は「特別扱い」されていた。だけど、
それが俺の胸にずっと引っかかっていた。
「俺はこんな待遇を受ける資格があるのか?」と。自分が頑張ったわけでもないのに、優遇されていく。
その一方で、同僚たちは必死に頑張っているのに報われない。昇進や処遇の差が、努力ではなく
「誰のコネで入ったか」で決まる現実に、心の底から嫌気が差した。
俺は、そんな環境に居続ける自分が許せなかった。
「公平で、誰もが実力で評価される場所で働きたい」と強く思うようになった。
ある日、仕事を終えて帰宅した俺は、住んでいた団地の掲示板に貼られた。
「公務員募集」のパンフレットを見た。その瞬間、胸が高鳴った。
「これだ!」と思った。
自分の力で勝ち取る公平な
世界がそこにある気がした。
翌日、市職員の知人に話を聞きに行った。だが、25歳の俺には行政職では年齢制限があり、入れないと言われた。
「まずは現業職で入り、6年経てば職種変更試験を受けられる。そこから行政職に進めばいい」とアドバイスを受けた。
その中で「学校用務員は長期休暇中に勉強時間を確保できる」と聞き、
俺の中で希望が見えてきた。すぐに勉強を始めようと決意した。
だが、それは簡単な道ではなかった。仕事を終え後、毎日4時間の勉強を
続ける日々。
学生時代、勉強なんて大嫌いだった俺が、机に向かい、参考書とにらめっこをする。
睡眠時間も削って、頭をフル回転させた。正直、つらかった。
でも、不思議とそれが嫌ではなかった。
何かに挑んでいる自分が少しだけ誇らしく思えたからだ。
そして、ついに26.3倍という高倍率を突破して合格を掴み取った。
通知を受け取った瞬間、涙が止まらなかった。「俺でもできたんだ」と、何度も心の中でつぶやいた。
これまで自分の力を信じたことなんてなかった俺が、
初めて自分を誇れる気がした。
初めて配属されたのは、
市の東にある川のせせらぎが聞こえる小学校だった。
初日、校門をくぐるとき、胸が高鳴った。待っていたのは校長先生、教頭先生、そして怖そうな顔をした先輩の用務員、秋山さんだった。
学校の色々な説明を受け、職員室で その小学校の 教員の方々に 紹介してもらうのだが・・新しく来られた
「秋山先生とスグル先生です」と校長先生が紹介
俺は 、ん・・?〝先生?〟俺が先生なの?
秋山先生はただの用務員ではなく、先生たちからも一目置かれる存在だった。
その後、秋山先生から多くのことを学んだ。人と真剣に向き合うこと、学校全体を支えることの大切さ。
そして、どんな小さな仕事にも誇りを持つこと。
公務員募集のパンフレットを見たあの日。あの瞬間、
違和感だらけだった自分の人生が大きく動いた。
その決断が今の俺を形作っている。学校で過ごした27年間、子どもたちや先生たちと築いた絆こそが、
俺の人生の宝物だ。
そして今、あの日頑張って勉強を続けた自分に、心から感謝している