【スグルのリアル体験 8 】〜「学校用務員としての気づきと成長」

「学校用務員」と聞いて、みんなはどんなイメージを持つだろうか?

俺の最初のイメージは正直、あまり良いものではなかった。ゴミを焼いたり、窓ガラスを替えたり、

簡単な仕事をして給料がもらえる、そんな「楽でいいな」と思うような仕事だと思っていたんだ。

 

しかし、実際にその仕事に就いてみると、

自分の考えがいかに浅はかだったかを思い知らされる日々が始まった。

 

学校用務員は、ただ裏方で働くだけじゃない。学校運営の役割分担に、

きっちり組み込まれ、児童生徒に直接関わる場面も多い。

職員会議にも参加し、教員と一緒に研修を受けることもある。

 

正直なところ、「なんでこんなことを俺がやらなきゃいけないんだ?」と思うことも多々あった。「学校用務員なんだから、もっと楽な仕事のはずだろ?」と

そんな思いを抱えながらも、厳しい秋山先生の指導を受けつつ、

「お金のためだ」と自分に言い聞かせ、毎日をなんとかやり過ごしていた。

 

そんな日々を続けて半年が経ったころ、ある出来事が起きた。

それは、俺にとって大きな転機となる出来事だった。

ある日、校長先生と秋山先生に呼び出され、「今日からこの先生と一緒に仕事をしてくれ」と言われた。

その先生とは、俺が少し仲良くなっていた高学年の担任、平尾先生だった。

 

平尾先生は真面目で優しい先生だった。しかし、話を聞いてみると、

その平尾先生が「クラス崩壊」によって心を病んでしまい、担任を外れることになったというのだ。

そんな理由で、俺と平尾先生は、学校用務員としての仕事を一緒にすることになった。

 

最初は正直どう接すればいいのか分からなかった。

でも、一緒に汗を流しながら校庭を整えたり、

教室を掃除したりする中で、少しずつ距離が縮まっていった。

 

秋山先生がいないときは、2人だけで働く時間も多く、自然といろんな話をするようになった。

平尾先生が抱えていた悩み、クラスの問題、教師という仕事の重さ、

そして、子どもたち一人ひとりの心の奥にある問題など、そのすべてが、

これまでの俺には全く想像もつかないものばかりだった。

「用務員」として働いているつもりだった俺は、平尾先生との交流を通じて、初めて

「学校全体の一員」としての自分に気づかされた。

俺がしている小さな仕事のひとつひとつが、児童と先生たちの支えになっているんだと感じるようになった。

 

そして、平尾先生の少しずつ明るくなっていく表情を見るたびに、胸が熱くなった。

この経験を通して、俺は仕事の意味を考えるようになった。

学校用務員はただの裏方じゃない。子どもたちの未来を支える一員であり、

先生たちを支える大切な存在なんだ。

毎日の仕事に誇りを感じるようになっていた。

 

平尾先生と出会わなければ、俺はこの気持ちにたどり着くことはできなかっただろう。

平尾先生との出会いは、俺にとって人生を変える経験だった。

涙を流しながら語り合い、励まし合いながら働いた日々・・それは、

俺の中で今も大切な宝物だ。

出会いは時として、必然的にやってくるのだろうか?