【スグルのリアル体験 9 】〜「仕事の本当の意味を探す」
- 2025/01/09
〝児童の問題・教員の問題〟に向き合うたび、俺は深く考えさせられた。
平尾先生は真面目で、一生懸命に頑張る先生だ。それなのに、なぜこの先生のクラスが崩壊してしまったのか・・
俺にはどうしても分からなかった。何が原因だったのか、どうすれば防げたのか、考えても答えが出ない。
ただ、不思議で仕方がなかった。
俺は彼の話を聞くだけだった。話を聞く以外に何もできなかった。無力だった。
でも、彼の話しを聞きながら胸が苦しくなる思いがした。
彼の言葉の中にある悲しみや苦しみが俺にも伝わってきて、切なさが胸をいっぱいにする。
それでも、俺と一緒に仕事をしている時だけは、平尾先生は、どこか楽しそうだった。
顔には〝笑顔〟が絶えなかった。その笑顔は、俺にとって救いだった。
俺自身、この仕事に対してモヤモヤを抱えていた中で、彼の笑顔を見るたびに少し心が軽くなった。
そんな中で、師匠である秋山先生の言葉を思い出した。「いろいろな先生がいるから、注意深く見ておきなさい」と—
秋山先生の言葉の意味を考えながら、俺は平尾先生との仕事を続けた。
彼が苦しみを解決できないかと考えながら・・。
でも、何も分からなかった。そして、平尾先生は〝退職〟を選んだ。
それだけじゃない。家庭でも大きな決断を迫られ、〝離婚〟という道を選んだ。
俺は・・俺は、友達を助けることができなかった。ただ話を聞くだけで、何も解決してあげられなかった。
無力感が胸に重くのしかかった。悔しかった。どうしようもなく悔しかった。
何かしてあげられたのではないか、もっと力になれたのではないかと、自分を責め続けた。
その日以来、俺は自問し続けた。「学校用務員って、なんなんだ?」
俺がしているのは、ただの修理や掃除だけの仕事なのか?それとも、もっと違う意味があるのか?
そんな問いが頭の中でぐるぐると渦巻き、答えが見つからないまま時間だけが過ぎていった。
でも、現実は変わらない。俺には生活がある。お金を稼ぐために、この仕事を続けるしかない。
「これは生活のためだ」と、自分に言い聞かせた。
自分の役割を「ただの用務員」だと割り切ることで、心の中の悔しさや疑問に蓋をしてきた。
それでも、平尾先生の笑顔が時折頭をよぎる。彼と過ごした日々、彼の笑顔、
そして彼の涙・・それらすべてが、俺にとって忘れられないものになっている。
俺は思う。平尾先生のような人を支えるために、もっと何かできたのではないかと。
用務員の仕事とは何なのか、自分の存在意義とは何なのか?
悔しさも、無力感も、全部抱えたまま、俺は、この仕事を続けた。
平尾先生、あなたの笑顔は俺にとって忘れられないものです。
どこかでまた会えたなら、その時はもっと強い自分になっていたいと心から思います。
先生の苦しみを全部救えなかった俺を、どうか許してください!