スグルのリアル体験 20 】〜 対話は解決の鍵
- 2025/02/07

職員室の朝はいつも荒れていた。
職朝で校長と教頭に質問が飛び交い、それを皮切りに職員同士が言い合いを始める。
議論はヒートアップし、児童たちの朝の会にまで影響が出ることもしばしばだった。
昼の職員会議ではさらにひどい。校長と教頭、それに一部の職員が感情をぶつけ合い、話は堂々巡り。
終了時刻はいつも大幅に遅れ、夜7時を過ぎるのは当たり前。ひどいときには夜11時まで続くこともある。
みんな疲れ切って帰り、また翌朝には同じことの繰り返しだ。
そんな日々が続く中、悲劇が起きた。
一人の同僚が流産してしまったのだ。直接の原因が会議でのトラブルかは分からない。
でも、怒号や罵声が飛び交い、涙が流れる会議が彼女に与えたストレスは計り知れない。
彼女が静かに「ごめんなさい」と泣きながら退職届を差し出したとき、俺は何も言えなかった。
ただただ、自分の無力さが悔しかった。
このままではいけない。学校は、子どもたちの未来を育てる場所だ。
それが、職員同士の争いで壊れていくなんて許されるはずがない。
そう思った俺は、信頼する北里先生に相談した。彼はしっかりと俺の目を見て「覚悟を持ちなさい。
それがないなら動くべきじゃない」と言った。
その言葉に背中を押され、俺は校長先生に直接話すことを決意した。
校長室のドアをノックする手が震える。大きく息を吸い込み、勇気を振り絞って扉を開けた。
「どうしましたか?」と校長先生の重い声が聞こえた。そのプレッシャーに押されつつも、俺は切り出した。
「校長先生、このままじゃ学校が壊れます。」
校長は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに真剣な顔になった。
「詳しく聞かせてください」と促され、俺は職員室の現状、そして流産の件で自分が思うことを包み隠さず話した。
「ストレスで心を病む職員が増えています。このままでは子どもたちに悪影響を与えてしまう。
学校が、教育が崩壊します。」そう言い切ると、校長は深く黙り込んだ。
「確かに最近、職場の雰囲気が悪いことは感じています。でも、正直どう改善すればいいか分からない。
私達にも学校現場としての方針があります。」校長の正直な言葉に少し驚いた。
そして同時に、この人なら話が通じるかもしれないと思った。
その瞬間、少しだけ肩の荷が下りた気がした。