【スグルのリアル体験 23 】〜 見えない存在

俺が勤めていたこの学校は、怪奇現象や幽霊が出ることで有名だった。

戦時中、この場所は戦死した人々の遺体置き場だったと言われている。

さらに、過去には校内で不慮の事故が立て続けに起き、複数の児童が命を落としたこともあった。

 

その出来事を鎮めるために建てられたという古びた碑が、今も校庭の片隅にひっそりと立っている。

俺が用務員室を少しでも明るくしようと、ポトスの鉢を部屋に吊るすことにしたときだった。

 

木の柱に金具で固定して吊るした鉢は、翌日、床に落ちていた。

「ちゃんと取り付けたはずなのに……」

そう思い、今度はしっかりと固定し直した。だが、また翌日には落ちていた。

おかしいと思い、北里先生と一緒に作業をした。

 

俺たちはこの手の作業には慣れていたので、念入りに確認し、さらに強力なボンドを使って取り付けた。

しかし、次の日――また落ちていた。

「どうして……?」

不気味さを感じ始めた俺に、北里先生が言った。

「見えない力が働いてるのかもな。この学校では、昔から用務員室で怪奇現象が起きてるんだ。

その昔、泊まり込みで仕事をしていた用務員たちは、みんな幽霊を見てるって話だよ。」

その言葉に、俺は背筋が凍る思いがした。ポトスが落ちるのは、ただの偶然じゃないのかもしれない――。

 

意を決して、隣の警備員室に泊まっていた警備員さんに怪奇現象のことを尋ねてみた。

当時、警備員さんは毎晩学校に泊まり、夜間の見回りをしていたのだ。

「怪奇現象か……見たことはあるよ」

警備員さんの口から出た言葉に、俺は緊張した。

 

「夜中になると、誰もいないはずの廊下を歩く足音が聞こえるんだ。

でも、見に行っても誰もいない。それが何度も続いた。あるときは、

ふすまが中から押さえられているみたいに開かなかったこともあった。開けたら誰もいなかったけど、

部屋の中は妙に冷たくてね……」

警備員さんは、さらに続けた。

「校庭の見回りをしてるとき、体育館の窓に子どもの顔が見えたこともあった。

でも、中に入っても誰もいない。何度もそんなことがあったよ。」

 

俺はその話を聞きながら、胸がざわざわと騒ぐのを感じていた。

ポトスの鉢が落ちる理由が、物理的な問題ではないような気がしてきたのだ。

それからしばらく、俺はポトスの鉢に手を出さないことにした。

だが、夜遅くに用務員室で仕事をしていると、廊下から微かな足音が聞こえることがあった。

「誰だ……?」

顔を出しても、廊下には誰もいない。ただ冷たい空気が漂うだけだった。

 

学校にまつわる怪奇現象が、過去の歴史と結びついているのではないか――そんな思いが次第に強くなった。

戦時中にこの場所が遺体置き場だったこと、不慮の事故で命を落とした子供たちの存在、そして校庭に立つ古びた碑・・

 

ある日、意を決して碑の前に立った。風雨にさらされ、読みにくくなった文字には

「ここで眠る魂を慰めるため」といった祈りの言葉が刻まれていた。

碑に手を合わせながら、俺はこの学校に込められた過去の思いを静かに感じていた。

 

その後、夜の学校は、機械警備が行われるようになり、警備員室も用務員室も夜は無人になった。

「あのポトスの鉢も、何かのメッセージだったのかもしれないな……」

俺はそう呟きながら、校舎を見回り、静かに用務員室の扉を閉めた。

校内には、過去と現在をつなぐような静寂が広がっていた。