【スグルのリアル体験 28 】〜 理解してくれる存在
- 2025/03/20

ある日の放課後、俺がいつものように掃除用具を片付けていると、背後から足音が聞こえた。
振り返ると、そこに立っていたのは、りょう君だった。
「スグル先生……何か手伝うことある?」
「おう、助かるよ!ちょうど倉庫の整理しようと思ってたんだ。」
りょう君は「まあ、やることねぇし」とぶっきらぼうに言いながら、俺についてきた。
倉庫の中で一緒にほうきを片付けながら、俺は昨日一緒にしたドアの修理の話を振ってみた。
「あのドア、ちゃんと閉まるようになったな。お前、意外と器用じゃん。」
すると、りょう君はちょっと誇らしげに、「まあ、昔から手先は器用っすよ」とボソッと答えた。
(お、いい感じじゃねぇか。)
俺は少しずつ、彼が話しやすい空気を作ろうとした。
「そっか。何か作ったりするの、好きなんか?」
「……まあな。ガキの頃から親父の自転車いじったりしてたし。」
意外な話に驚いた。でも、それを聞いた瞬間、俺の中にあった昔の自分がふと顔を出した。
俺もあの頃、意味もなくイライラしていたけど、自転車をいじる時間だけは少し落ち着けたっけ。
「へぇ、自転車な。俺も昔は好きだったぞ。どんなの乗ってたか、聞きたいか?」
「え、先生も?」
興味がありそうな顔をしながら、りょう君はホウキを片手に俺の話を聞いている。
「昔はな、赤く染めた頭に刺繍入りの短ラン着て、自転車で走り回ってたよ。」
彼は驚いた顔をして、「マジかよ……今と全然違うじゃん」と笑った。
「そりゃな。でもさ、いつまでもそうじゃいられねぇんだよ。
ま、今はこうやってお前みたいな奴と関わるのが仕事だけどな。」
りょう君はしばらく黙っていたが、ぽつりと「……先生、なんで俺に構うの?」と聞いてきた。
俺は少し考えてから、正直に言った。
「お前みたいなヤツの気持ちが、少しわかるからさ。」
その言葉に、りょう君はしばらく黙っていた。でも、俺の目を見つめるその表情には、少しだけ変化があった。
「……まぁ、別に悪い気はしねぇけどな。」
そう言って倉庫を出ていく、りょう君の背中を見送りながら、俺は心の中で思った。
(少しずつ、変わり始めてるのかもしれねぇな。)
次の日の朝、正門に立っていると、りょう君が俺の前を通りかかった。
俺はいつものように「おはよう」と声をかける。
すると彼は、ほんの少しだけ間をおいてから、「おはようございます」と、昨日よりも少しだけ大きな声で返してくれた。
周りの先生や生徒たちも驚いていた。
俺は心の中で静かにガッツポーズをしながら思った。
「こうやって、一歩ずつ進んでいけばいいさ。」
彼がこれからどうなるかはわからない。でも、俺が昔そうだったように、
どこかで誰かが関わり続けてくれることが、大事なんだ。
そう思いながら、俺はいつもより少し誇らしげに、門の前に立っていた。