【スグルのリアル体験 28 】〜 理解してくれる存在

ある日の放課後、俺がいつものように掃除用具を片付けていると、背後から足音が聞こえた。

振り返ると、そこに立っていたのは、りょう君だった。

 

「スグル先生……何か手伝うことある?」

「おう、助かるよ!ちょうど倉庫の整理しようと思ってたんだ。」

りょう君は「まあ、やることねぇし」とぶっきらぼうに言いながら、俺についてきた。

 

倉庫の中で一緒にほうきを片付けながら、俺は昨日一緒にしたドアの修理の話を振ってみた。

「あのドア、ちゃんと閉まるようになったな。お前、意外と器用じゃん。」

すると、りょう君はちょっと誇らしげに、「まあ、昔から手先は器用っすよ」とボソッと答えた。

(お、いい感じじゃねぇか。)

俺は少しずつ、彼が話しやすい空気を作ろうとした。

「そっか。何か作ったりするの、好きなんか?」

「……まあな。ガキの頃から親父の自転車いじったりしてたし。」

意外な話に驚いた。でも、それを聞いた瞬間、俺の中にあった昔の自分がふと顔を出した。

 

俺もあの頃、意味もなくイライラしていたけど、自転車をいじる時間だけは少し落ち着けたっけ。

「へぇ、自転車な。俺も昔は好きだったぞ。どんなの乗ってたか、聞きたいか?」

「え、先生も?」

興味がありそうな顔をしながら、りょう君はホウキを片手に俺の話を聞いている。

 

「昔はな、赤く染めた頭に刺繍入りの短ラン着て、自転車で走り回ってたよ。」

彼は驚いた顔をして、「マジかよ……今と全然違うじゃん」と笑った。

「そりゃな。でもさ、いつまでもそうじゃいられねぇんだよ。

ま、今はこうやってお前みたいな奴と関わるのが仕事だけどな。」

りょう君はしばらく黙っていたが、ぽつりと「……先生、なんで俺に構うの?」と聞いてきた。

 

俺は少し考えてから、正直に言った。

「お前みたいなヤツの気持ちが、少しわかるからさ。」

その言葉に、りょう君はしばらく黙っていた。でも、俺の目を見つめるその表情には、少しだけ変化があった。

「……まぁ、別に悪い気はしねぇけどな。」

そう言って倉庫を出ていく、りょう君の背中を見送りながら、俺は心の中で思った。

(少しずつ、変わり始めてるのかもしれねぇな。)

 

次の日の朝、正門に立っていると、りょう君が俺の前を通りかかった。

俺はいつものように「おはよう」と声をかける。

すると彼は、ほんの少しだけ間をおいてから、「おはようございます」と、昨日よりも少しだけ大きな声で返してくれた。

周りの先生や生徒たちも驚いていた。

俺は心の中で静かにガッツポーズをしながら思った。

「こうやって、一歩ずつ進んでいけばいいさ。」

彼がこれからどうなるかはわからない。でも、俺が昔そうだったように、

どこかで誰かが関わり続けてくれることが、大事なんだ。

そう思いながら、俺はいつもより少し誇らしげに、門の前に立っていた。