【スグルのリアル体験 30 】〜 不器用な優しさ
- 2025/04/03

ある日の放課後、俺は〝ボス〟と〝りょう君〟にラーメンを食べに行こうと誘った。
「マジっすか?」
最初は少し驚いたような顔をしていたが、2人とも「悪ぃな」と照れくさそうに言いながらも、俺についてきた。
ラーメン屋に入ると、店内は湯気で少し曇っていて、カウンター越しに店主が威勢よく注文を取っていた。
「先生、こんなとこ来るんすね。」
〝りょう君〟がニヤッとしながら言う。
俺は「たまにはな。ラーメンぐらい奢ってやるよ」と笑った。
2人は嬉しそうに椅子に座り、メニューをじっと眺めていた。
「ボス、最近大人しいっすね。」
〝りょう君〟が軽い調子で言ったが、〝ボス〟はメニューから目を離さず、ポツリと答えた。
「別に……」
その声はどこか元気がなかった。俺は何も言わず、ラーメンが来るのを待った。
沈黙の中、〝ボス〟がふと口を開いた。
「……俺、母ちゃんに悪いと思ってるんすよ。」
俺も〝りょう君〟も驚いて箸を持つ手を止めた。
「夜遅くまで働いてんのに、俺は好き勝手遊んで……家でもあんま話さねぇし……。」
〝りょう君〟が珍しく真面目な顔になり、小さな声で言った。
「まぁ……なんつーか、わかるけどな。」
〝ボス〟は湯気が立ち上るラーメンをぼんやりと見つめながら、さらに続けた。
「家帰っても誰もいねぇし……静かすぎて落ち着かねぇ。だから、外にいた方が楽でさ。」
俺は彼の横顔を見ながら、ゆっくりと答えた。
「そっか。寂しいよな、家に帰っても話す相手がいないって。」
「……まぁ。」
そこに、熱々のラーメンが運ばれてきた。
「いただきます。」
〝ボス〟はスープを一口すすり、ほっとした表情を浮かべた。
「うめぇ……。」
その言葉を聞いて、俺は少し安心した。
ラーメンを食べながら、俺は少しずつ本題に入った。
「お前さ、怒りのやり場がわかんなくて、椅子ぶっ壊したんだろ?」
〝ボス〟は箸を止め、バツが悪そうにしながらも、小さく頷いた。
「……かもな。」
「でもさ、今日、修理した椅子、ちゃんと座れたよな?」
〝ボス〟は黙ってうなずく。
「ぶっ壊すのは簡単だけど、直すのは大変だったろ?」
〝りょう君〟が笑いながら、「マジでネジ多すぎだろ、あれ」と付け加えた。
〝ボス〟もクスッと笑い、「まぁ……やればなんとかなるもんですね」と小さくつぶやいた。
俺は、静かに頷いた。
「そうだ。ぶっ壊すより、直す方が大変。でも、それをやったお前ら、ちょっとは誇っていいんじゃねぇの?」
〝ボス〟はレンゲを置き、俺の方を見つめた。
「……先生、俺……これからどうすればいいすかね?」
俺は彼がその言葉を口にするのを待っていた。
「まずは、できることからでいいんだよ。家にいる時間、ちょっとでも増やしてみるとかさ。母ちゃん、きっとお前と話したいって思ってるぞ。」
〝ボス〟は深いため息をつきながら、ラーメンをすすった。
「……そうっすね。ちょっと、やってみるわ。」
その言葉を聞いて、俺の胸がじんわりと熱くなった。
「よし、それでいい。腹いっぱい食って、明日からまた頑張ろうぜ。」
「……はい。」
こうして、俺たちのラーメン屋での時間は、ただの食事以上の意味を持っていた。
帰り道、〝ボス〟は少し前を歩きながら、小さな声でつぶやいた。
「先生、サンキューな。」
俺は彼の背中を見つめながら、静かにガッツポーズをした。
(まだまだこれからだ。ゆっくりでいい。関わり続けることが大事なんだ。)
俺はこれからも、〝ボス〟や〝りょう君〟と向き合っていく。あいつらの未来が、少しでも明るくなるように