【スグルのリアル体験 31】〜 壊れた心の修理
- 2025/04/10

俺は、朝早くから校舎内を巡回していた。すると、3階の廊下のガラスが粉々に割れ、掃除箱のドアが無惨に壊されているのを見つけた。
「またか…」
深いため息をつきながら、俺はすぐに〝ボス〟を呼び出した。
〝ボス〟はこの学校でリーダー的存在だ。
やんちゃな連中の中心にいて、時には問題を起こすこともあるが、根は悪い奴じゃない。
俺は彼を信じている。だから、こういう時はまず彼に話をする。
「今朝な、3階の廊下のガラスと掃除箱のドアが壊されてたんだよ。
校舎の物はみんなの大切な物だ。お前たちの親たちが一生懸命働いて、税金で買ってくれてるんだぞ。」
〝ボス〟は黙って俺の話を聞いていた。俺は少し間を置いてから、静かに続けた。
「でもな、一番心配なのは壊した本人の怪我だ。ガラスの破片で動脈を切ったら命に関わる。体は何よりも大事なんだよ。」
すると〝ボス〟は意外なことを口にした。
「自分が犯人を探すよ…心当たりがあるから。」
その言葉を聞いた瞬間、俺はなんとなく察しがついた。〝ボス〟が心当たりがあるというなら、あいつしかいない。
「任せたよ。よろしく頼む。」
そう言って、俺は本業の修理に取り掛かった。
まず、割れたガラスの破片を慎重に片付ける。破片の一つ一つを確認しながら、周囲の安全を確保する。
作業中、指先が小さく切れてしまったが、そんなこと気にしている暇はない。
新しいガラスを寸法通りに切り出し、ぴったりと枠にはめ込むと、まるで何事もなかったかのように元通りになった。
次に、壊れた掃除箱のドアを外し、用務員室へ運ぶ。破損部分をすべて取り除き、新しいベニヤ板を寸法通りに切り出して貼り付ける。
最後に塗装をして仕上げる作業だ!
作業を進めていると〝ボス〟が一人を連れてやって来た。
案の定、〝りょう君〟だった。彼は少しうつむいて、目を合わせようとしない。
〝ボス〟が口を開いた。
「…こいつがやったって、自分で言ったよ。」
俺は〝りょう君〟の顔をじっと見た。怒るつもりはなかった。
ただ、彼の本当の気持ちを知りたかった。
「怪我はしてないか?」
彼は小さく首を横に振った。「ちょっと指を切っただけ…」と、申し訳なさそうに答えた。
俺はふっと息をつき、彼の肩を軽く叩いた。
「壊したことはよくない。だけど、正直に言いに来たのは偉いよ。」
彼は黙ったまま、うつむいたままだった。
「壊れた物は俺が直せる。でもな、大事なのは、お前の気持ちだ。これからどうするかが一番大切なんだよ。」
〝りょう君〟は唇を噛みしめ、少し目を潤ませていた。
すると、〝ボス〟が言った。
「罰として、明日からスグル先生の手伝いをさせてください。修理とか、色々教えてもらえませんか?」
俺は少し驚いたが、笑って頷いた。
「それなら、しっかり頼むぞ。次はお前の手で何かを壊すんじゃなく、直す側に回るんだ。」
〝りょう君〟は涙をこらえながら、小さく「…うん」と頷いた。
俺は修理道具を片付けながら、彼に向かって言った。
「さて、明日は一緒に壊れたドアの修理からだな。」