【スグルのリアル体験 40】〜 朝のボランティア
- 2025/06/12

朝、ボランティアに向かう準備をし、信号の前に立っていた。
すると、反対側の信号に〝番長〟の姿があった。
「ヨッシャーーー!!」
心の中で叫んだ。
あの番長が、まさかボランティアに来るとは……。
彼の男気は本物だった。
朝、登校してくる生徒たちは、ゴミ拾いをしている番長の姿に驚き、振り返る。
これは、とても重要な意味を持つ出来事だった。
この学校の〝番長〟と〝気弱な生徒〟が協力しながら、自分たちの街をきれいにする。
それによって、生徒たちは街を愛する気持ちを育んでいく。
俺はこの活動を広げるために、大きな看板を作ることを提案した。
「俺たちの街を、いつもキレイに」
そう書かれた看板は、今でも運動場のフェンスに掲げられている。
すると、驚くべきことが起こった。
なんと、朝のボランティアを希望する生徒が増えていったのだ。
最初は数人だったが、次第に人数が増え、気がつけばさまざまなキャラの生徒たちが参加するようになっていた。
バケツと火バサミを手に持ち、三班に分かれて各町内を清掃する。
そして、ボランティアが終わると、そのまま〝あいさつ運動〟に参加する生徒まで出てきた。
毎朝、校門の前で
「おはよう!」
「おはようございます!」
と、元気な声が響き渡るようになった。
彼らは、いまはまだ分からないかもしれない。
でも、いつかきっと〝ボランティアを続ける意味〟を理解する日が来る。
「その日が来たら、どんな顔をするんだろう?」
そんなことを考えながら、俺はワクワクした。
さて4月、新しい講師たちが赴任してきた。
ある日、校長先生に呼ばれ、校長室へ向かうと、こう言われた。
「スグル先生、忙しいだろうけど、新しく来た講師3人に関わってくれないか?」
言葉を交わさずとも、校長先生の意図は分かった。
俺は即答した。
「はい、俺でできることでしたら」
しかし、勤務時間中は授業がある。となると、関われるのは 朝 か 放課後 しかない……。
「やるしかない……。やってみよう。」
思えば、校長先生は以前こんなことを言っていた。
「目立つものは、放っておいても活躍する。でも、目立たない原石を見つけて輝かせるのが、俺たちのやることだ」
俺はその言葉を胸に刻み、新しく赴任した3人の講師と向き合うことにした。
理科専科の中村先生は、控えめな理論派。
体育専科の塚原先生は、ラグビーをしていたが、意外と物静か。
もう一人の体育専科、奥野先生は、ハッキリした性格で、素直な人だった。
三者三様、個性がバラバラだ。
「果たして、この厳しい学校でやっていけるのか……?」
学校も、地域も、行事も、すべてが〝本気〟のこの中学校。
彼らは、この環境で何を感じ、どう成長していくのか——。
俺は、その姿を見届けようと思った。