【スグルのリアル体験 46】 〜鬼ごっこの悪魔が、天使になった瞬間〜
- 2025/07/24

全国で34万人以上。いま、学校に行けない子どもたちがいる。
この中学校にも、数名の不登校生がいた。
ある日、教務の先生が俺のところへ来てこう言った。
「スグル先生、来週の職場体験学習… ひとりお願いできませんか?」
その生徒の名前は、浜田くん。
不登校。1日来ても、2日目は遅刻。3日目にはもう来られない。
家庭環境も複雑で、心の奥の殻に閉じこもっている。
俺は即答できなかった。
「自信がない」わけじゃない。
でも、“やるからには本気”が俺の信条だ。
彼に、学校の意味や楽しさを伝えたい。そう思うと、不思議と心が熱くなった。
これは…神様からのプレゼントかもしれない。
「お前、まだ“天使”になれるぞ」って。そんな気がした。
そして――浜田くんがやってきた。
背が高く、髪はボサボサ。ぽっちゃり体型。
「おはよう!一緒に楽しもうな!」と声をかけると、彼は「…はい」と暗い声で返した。
小さく、けれど確かに返ってきた。最初の作戦は【安心させること】。
俺は考え抜いた。
彼に提案したのは――
校舎の壁のペンキ塗り。ただの作業じゃない。
「この場所は、君の居場所だ」と伝えるメッセージだ。
場所は理科室前の5mの壁。
“思い出”になるよう、あえて汚れた部分を選んだ。
理科の先生にもお願いして、その期間は第2理科室を使ってもらった。
他の先生にも声をかけ、彼にさりげなく話しかけてもらった。
お、うまく塗ってるね〜」
「ありがとう、助かるよ」
浜田くんは最初、無言でうつむいていた。
でも――3日目。
彼の手が、止まらずに動いていた。
時間になっても、「もう少し、ここだけやらせてください」って。
俺は心の中で、思わずガッツポーズ。
彼の背中が、少しだけ…自信に満ちていた。
「浜田、お前、なかなかやるな」って言うと、小さく笑った。
俺はその笑顔を、一生忘れない。
たった7日間。でも、彼にとっては“人生が
少し変わるきっかけ”になったかもしれない。
そして、俺にとっても。
教育って、こういうことだ。誰かの“今”に寄り添うこと。答えは出なくても、共にいること。
あの時、職場体験を持ってきてくれた教務の先生――
あの人はきっと、神様の遣いだった。
そして俺は、あの7日間だけは“天使”になれた気がする。