【スグルのリアル体験67】 〜 絶対に怪我はさせない 〜
- 2026/02/12

さぁ、太鼓の合図とともに騎馬がいっせいに走り出した。
運動場が揺れるほどの歓声。騎馬に乗った騎士たちは、互いに帽子を奪い合い、肩と肩をぶつけ合う。
やがて、一騎が大きく揺れた。
力負けした騎士が、前のめりに崩れ落ちる――。
俺は反射的に地面へ飛び込み、体をクッション代わりにして受け止めた。
土と汗の匂いが全身を覆った。
次の瞬間、別の騎馬が崩れかけた。
俺は立ち上がり、再び走り込み、必死で下に潜り込んだ。
――我が日本の未来を担う騎士たちを、絶対に怪我させてはならない。
その一心だった。
目の前で繰り広げられる闘志あふれる戦い。
紅白それぞれの騎士たちが、歯を食いしばり、仲間と力を合わせて踏ん張っていた。
すり傷や砂だらけの手足。それでも誰一人として諦めない。
俺は何度も走り、何度も飛び込んだ。
腕は擦りむけ、背中に土の熱が染みる。
それでも心は折れなかった。
「絶対に守る」――それが俺の役割だからだ。
やがて、終わりを告げる太鼓の音が「ドォーン」と鳴り響いた。
最後まで残った紅白の大将騎馬は、お互いに倒れることなく、堂々の引き分け。
会場からは、割れんばかりの拍手と歓声が上がった。
勇敢な騎士たちは、すり傷や軽い打撲こそあったが、大きな怪我は誰一人いなかった。
運動場の真ん中で肩を組み合い、笑顔で抱き合う子どもたち。
その姿に胸が熱くなった。
もしかすると一番怪我をしていたのは、俺自身だったのかもしれない。
全身土まみれ、膝や肘は擦り傷だらけだった。
だが、不思議と痛みはなかった。
校長先生が本部席から駆け寄って来て
「スグル先生、ありがとう。素晴らしい運動会になりました!」
その瞬間、胸の奥からじわっと達成感があふれ出した。
安堵と誇り、そして全ては子供達の輝きと未来のために!

