【スグルのリアル体験 9 】〜「仕事の本当の意味を探す」

〝児童の問題・教員の問題〟に向き合うたび、俺は深く考えさせられた。

平尾先生は真面目で、一生懸命に頑張る先生だ。それなのに、なぜこの先生のクラスが崩壊してしまったのか・・ 

俺にはどうしても分からなかった。何が原因だったのか、どうすれば防げたのか、考えても答えが出ない。

ただ、不思議で仕方がなかった。

 

俺は彼の話を聞くだけだった。話を聞く以外に何もできなかった。無力だった。

でも、彼の話しを聞きながら胸が苦しくなる思いがした。

彼の言葉の中にある悲しみや苦しみが俺にも伝わってきて、切なさが胸をいっぱいにする。

 

それでも、俺と一緒に仕事をしている時だけは、平尾先生は、どこか楽しそうだった。

顔には〝笑顔〟が絶えなかった。その笑顔は、俺にとって救いだった。

俺自身、この仕事に対してモヤモヤを抱えていた中で、彼の笑顔を見るたびに少し心が軽くなった。

 

そんな中で、師匠である秋山先生の言葉を思い出した。「いろいろな先生がいるから、注意深く見ておきなさい」と—

秋山先生の言葉の意味を考えながら、俺は平尾先生との仕事を続けた。

彼が苦しみを解決できないかと考えながら・・。

でも、何も分からなかった。そして、平尾先生は〝退職〟を選んだ。

それだけじゃない。家庭でも大きな決断を迫られ、〝離婚〟という道を選んだ。

俺は・・俺は、友達を助けることができなかった。ただ話を聞くだけで、何も解決してあげられなかった。

無力感が胸に重くのしかかった。悔しかった。どうしようもなく悔しかった。

何かしてあげられたのではないか、もっと力になれたのではないかと、自分を責め続けた。

 

その日以来、俺は自問し続けた。「学校用務員って、なんなんだ?」

俺がしているのは、ただの修理や掃除だけの仕事なのか?それとも、もっと違う意味があるのか?

そんな問いが頭の中でぐるぐると渦巻き、答えが見つからないまま時間だけが過ぎていった。

 

でも、現実は変わらない。俺には生活がある。お金を稼ぐために、この仕事を続けるしかない。

「これは生活のためだ」と、自分に言い聞かせた。

自分の役割を「ただの用務員」だと割り切ることで、心の中の悔しさや疑問に蓋をしてきた。

 

それでも、平尾先生の笑顔が時折頭をよぎる。彼と過ごした日々、彼の笑顔、

そして彼の涙・・それらすべてが、俺にとって忘れられないものになっている。

俺は思う。平尾先生のような人を支えるために、もっと何かできたのではないかと。

用務員の仕事とは何なのか、自分の存在意義とは何なのか?

悔しさも、無力感も、全部抱えたまま、俺は、この仕事を続けた。

 

平尾先生、あなたの笑顔は俺にとって忘れられないものです。

どこかでまた会えたなら、その時はもっと強い自分になっていたいと心から思います。

先生の苦しみを全部救えなかった俺を、どうか許してください!