【スグルのリアル体験 22 】〜 立場の狭間で揺れる心

昼から始まった職員会議は、いつものように長引いていた。

会議室には緊張感が漂い、管理職と職員たちの言い合いが続いている。
苛立ちや不満が飛び交う中、校長先生がふと教頭先生に助けを求める視線を送った。

すると、教頭先生が校長先生に対して反対意見を述べたのだ。
その瞬間、会議室は凍りついたような静寂に包まれた。

職員たちはざわめき、校長先生は言葉を失って固まっている。

普段、調整役に徹してきた教頭先生が、あえて校長に異を唱える姿に誰もが驚き、戸惑いを隠せなかった。

まるで異次元に迷い込んだかのような、異様な空気が会議室全体を支配していた

 

会議が終わると、対立していた職員が教頭先生の元に歩み寄った。

教頭先生が自分の本音をさらけ出したことで、現場の職員たちの信頼を得たのだ。

 

その一方で、校長先生の姿が気になった俺は、校長室へ向かった。

教頭先生の本音や職員たちの気持ちを、できるだけ率直に伝えた。

 

すると、校長先生はゆっくりと話し始めた。

「先生たちには見せていなかったけど、私だって苦しいんです」

そう言って、再び「校長の立場」について語り始めた校長先生の表情は、どこか疲れ切っていた。

 

孤立感や責任の重圧に押しつぶされそうになりながらも、誰にもそれを吐露できない。

その苦しさが痛いほど伝わってきた。

「仕事が落ち着いたら、また校長室に来てくれませんか?」

そう言われた俺は、それから頻繁に、休み時間に校長室を訪れるようになった。

 

校長先生の「立場」、教頭先生の「立場」、対立する職員たちの「立場」。

それぞれが異なる立場に縛られ、見えない鎖で苦しんでいた。

誰もが「立場」によって自分を押し殺し、心の奥底にある本音を語れない。

「立場」という名の魔物が、人の心をこんなにも追い詰めるものだとは思わなかった。

俺の中には、やり場のない怒りに似た感情が渦巻いていた。

それでも、俺には何かできることがあるはずだと思った。

 

校長室では、校長先生がいつもお気に入りのお茶を淹れてくれた。

お茶を片手に、校長先生は自分の思いを少しずつ語り始めた。

その言葉は決して軽いものではなく、深い葛藤と責任感に満ちていた。

俺はその言葉を受け止めながら、教頭先生や職員たちの思いを校長先生に伝えた。

 

そして、同じように教頭先生や職員たちには校長先生の「立場」を伝え続けた。

「お互いに少しずつ妥協することができれば、この状況も変わるのではないか」と願いながら、

俺は何度も何度も話をした。

そんな日々を続けていくうちに、職員たちの間に少しずつ変化が生まれていった。

 

以前のような激しい対立は次第に収まり、学校全体の空気が少し柔らかくなったように感じた。

ある日の午後、校内に気持ちのいい風が吹き抜けていた。

窓を開け放した用務員室から聞こえる子どもたちの笑い声が、どこか心地よく響いてくる。

穏やかな空気の中、俺はふと足を止めて深呼吸をした。

 

お互いに本音を言えない「立場」に苦しむ人たちが、少しずつ心を通わせるようになったこと。

俺の小さな役割が、その橋渡しの一端を担えたこと。それを思うと、胸が熱くなった。

学校はまだ完璧に変わったわけではない。それでも、かつてのギスギスした空気からは確実に前進している。

 

この風景を見ていると、自分の小さな行動が少しでも役立ったのだろうか。

そんなことを思いながら、俺は穏やかな風を背に受け、歩き出した。

苦しみを乗り越えた学校には、また新たな物語が始まろうとしている気がした。

さて――。

次は俺がこの学校で経験した、ちょっと怖い話でもしてみましょうか?