【スグルのリアル体験 24 】〜 見えない存在②
- 2025/02/21

学校にまつわる怪奇現象の話は、誰もが知っている噂だった。
長年ここで働く先生たちの間でも「この学校には幽霊がいる」と半ば当たりまえのように囁かれていた。
しかし、俺はその噂を信じていなかった。ただの作り話だろうと。けれど、ある日警備員さんにその話を聞いてみた。
すると彼は、思いもよらない話を語り始めた。
「僕は、幽霊を2回見ました。一度は職員室、もう一度は3階の奥の教室でね。」
彼の口から飛び出したその言葉に、俺は背筋が凍った。特に職員室で見たという話が忘れられない。
ある教員の椅子に座る幽霊を目撃したというのだ。「誰の椅子かは言えないけど、そこに座っていた」と彼は静かに話した。
あまりにも具体的で、冗談で言っているようには思えなかった。
そういえば、以前同僚から聞いた話を思い出した。
3階の奥の教室から夜な夜な足音や物音が聞こえること、どれだけ壁にペンキを塗っても赤黒い染みが滲み出てくること。
その話を思い返すと、警備員さんの話と重なり、恐怖は現実味を帯びた。
「3階にある、あの教室は、電気がたしかに、ついていたんだ。僕が見に行くと、消えてる。
でも部屋に入ると誰もいないんだよ」と警備員さんは言った。
俺もその教室の異変に心当たりがあった。ある夕方、先生たちがその3階で話し合いをしていた後、こんなことを聞かれたのだ。
「スグル、さっき廊下を通って突き当たりの部屋に入った人、君だよね?」
俺は驚きながら否定した。「いえ、1階で仕事をしていました」と答えると、先生たちは顔を見合わせた。
「誰かが確かに入ったんだ。でも戻ってこないから、君だと思ったのに…」
この学校には、見えない何かがあるのかもしれない――そう思わずにはいられなかった。
しかし、警備員さんの話はそれだけでは終わらなかった。
彼はさらに重い声で、こう続けた。
「もう一つ、幽霊が出る場所があるんだ。体育館の裏口だよ。」
体育館の裏口。俺は思わず聞き返した。「昼間は普通に使われていますよね?」
「そうだ。でも夜は違う。特に雨の日、あそこの雰囲気はおかしいんだ。」
裏側の、錆びついたチェーンが巻かれた古びた門が思い浮かんだ。
警備員さんは続けた。
「あの扉から夜中になると音がする。ギシギシと、まるで誰かが内側から開けようとしているみたいに」
その話を聞いた瞬間、妙な胸騒ぎがした。俺は無意識に、古びた門を思い浮かべていた。
昼間見た何でもない風景が、急に不気味なものに思えた。
「その門で幽霊を見たことはあるんですか?」俺がそう尋ねると、警備員さんは首を立てに振った。
「3年生くらいの女の子が立ってるよ」
その言葉は、まるで身体にまとわりつく雪のように俺を凍らせた。俺はその日から、体育館の古いびた門を意識せずにはいられなくなった。
昼間は何でもない場所。でも夜になれば、そこはもうただの古びた門ではなくなる。
学校という場所は、どれだけ多くの人の想いを背負っているのだろう。
喜びも、悲しみも、そしてきっと忘れ去られた痛みも。
そう考えると、この学校の中に漂う怪奇現象は、ただの恐怖ではなく、何かを伝えようとしているように思えてきた。
幽霊がいるのかどうかはわからない。
ただ、この学校には何か、語られなかった物語が眠っているかも知れない。
それを思うと、胸が熱く重い気持ちになるのだった。