【スグルのリアル体験 33】〜 校長室での学び、そして・・
- 2025/04/24

校長室へ行くと、校長先生は微笑みながら言った。
「スグル先生、お疲れさま。明日から給食は校長室で一緒に食べましょう。」
一瞬、意味がわからなかった。
俺は用務員だ。校長先生と一緒に給食?
「え、俺がですか?」と聞き返すと、校長先生は当然のように頷いた。
「ええ。あなたはこの学校にとって大切な存在ですから。」
その言葉に、思わず胸が熱くなった。
校長先生は、 女性でありながらスコップを持ち、俺の仕事を手伝い、先生たちや生徒たちからも慕われる、
圧倒的なバイタリティを持つ人だった。
そして、この校長先生は あのオリンピック選手の恩師だ。
柔道で二度金メダルを獲得した、あの選手。
その選手が世界の頂点に立つまでの道のりを支えたのが、この校長先生だったらしい。
俺は、 この校長先生に学びたいと思った。
汗を流し、生徒たちと同じ目線で向き合い、どんな仕事も厭わずにこなす――
その生き様は、俺の心を動かした。
その気持ちが伝わったのか、翌日から 毎日、給食の時間は校長室へ行くことになった。
校長室での学び
次の日、校長室へ向かうと、すでにもう一人の先客がいた。
それは、 教頭先生だった。
「スグル先生、これから毎日ここで給食を食べながら、学校について学んでもらいますよ。」
校長先生は、まるで当たり前のことのように言った。
そして、その日から俺の給食の時間は 学校運営の学びの時間 へと変わった。
校長先生が話すのは、
・学校運営について
・地域との関わり方
・先生や生徒の指導方法
・学校の未来の指針について
さらに、校長先生は 俺と教頭先生に次々と問いを投げかけた。
「もし、生徒が地域の人とトラブルを起こしたら、どう対応すべきか?」
「保護者から理不尽なクレームが来たとき、まず何をすべきか?」
「先生が問題を起こした場合、どう対処する?」
俺は最初、頭が真っ白になった。
俺は用務員だぞ? こんな大事なことを考える立場じゃない。
けれど、校長先生は違った。
「スグル先生、あなたは学校の一員なんです。ただ掃除や修繕をするだけじゃない。生徒の成長を支える大事な存在ですよ。」
その言葉が心に響いた。
俺の仕事はただの「裏方」じゃないんだ。
学校を支える仕事をしているんだ――そう思えた。
最初は戸惑っていた俺も、毎日の積み重ねで、 少しずつ学校運営が理解できるようになっていった。
地域や保護者、先生たちへの対応の仕方も学んだ。
もちろん、俺の本業である 用務員の仕事も手を抜かなかった。
朝から掃除、修繕、備品管理、そして給食の時間は校長室での学び。
体力的にはキツかった。
けれど、不思議と充実していた。
今思えば――
よくやれたな、俺。
そんなある日・・
いつものように校長室で給食を食べていると、 教務主任の先生 が慌てた様子でやってきた。
「スグル先生……ちょっと、いいですか?」
俺は箸を止めた。
「どうしました?」
教務主任の先生は、深呼吸してから口を開いた。
「実は…… 大変なことになっているんです。」
俺は思わず ゴクリ と唾を飲み込んだ。
な、なんだ……?
校長先生も教頭先生も、真剣な表情で教務主任の先生を見つめる。
「とにかく、スグル先生に来てほしいんです。」
教務主任の先生は、覚悟を決めたような表情をした。