【スグルのリアル体験67】 〜 絶対に怪我はさせない 〜

さぁ、太鼓の合図とともに騎馬がいっせいに走り出した。

 

運動場が揺れるほどの歓声。騎馬に乗った騎士たちは、互いに帽子を奪い合い、肩と肩をぶつけ合う。

やがて、一騎が大きく揺れた。

 

力負けした騎士が、前のめりに崩れ落ちる――。

 

俺は反射的に地面へ飛び込み、体をクッション代わりにして受け止めた。

土と汗の匂いが全身を覆った。

 

次の瞬間、別の騎馬が崩れかけた。

俺は立ち上がり、再び走り込み、必死で下に潜り込んだ。

 

――我が日本の未来を担う騎士たちを、絶対に怪我させてはならない。

その一心だった。

 

目の前で繰り広げられる闘志あふれる戦い。

紅白それぞれの騎士たちが、歯を食いしばり、仲間と力を合わせて踏ん張っていた。

すり傷や砂だらけの手足。それでも誰一人として諦めない。

俺は何度も走り、何度も飛び込んだ。

腕は擦りむけ、背中に土の熱が染みる。

 

それでも心は折れなかった。

「絶対に守る」――それが俺の役割だからだ。

やがて、終わりを告げる太鼓の音が「ドォーン」と鳴り響いた。

 

最後まで残った紅白の大将騎馬は、お互いに倒れることなく、堂々の引き分け。

会場からは、割れんばかりの拍手と歓声が上がった。

 

勇敢な騎士たちは、すり傷や軽い打撲こそあったが、大きな怪我は誰一人いなかった。

運動場の真ん中で肩を組み合い、笑顔で抱き合う子どもたち。

その姿に胸が熱くなった。

 

もしかすると一番怪我をしていたのは、俺自身だったのかもしれない。

全身土まみれ、膝や肘は擦り傷だらけだった。

 

だが、不思議と痛みはなかった。

校長先生が本部席から駆け寄って来て

「スグル先生、ありがとう。素晴らしい運動会になりました!」

 

その瞬間、胸の奥からじわっと達成感があふれ出した。

安堵と誇り、そして全ては子供達の輝きと未来のために!